ホーウィン訪問記パート2 (2017)

今回の出張は中々ハードで、と言うのも三週間ほど前にロシアで交通事故に巻き込まれ、まだ体調が完璧でなかった事と、何より超大型の台風が日本を直撃し、出発のフライトが怪しくなってしまい、台風の中を東京に移動して前泊しなくてはならなかったのです。

それでも私には今回の出張を延期するわけにいかない理由がありました。。。。二足のレアカラーがショップからホテルに送り届けられているし、プリオーダーしていたものも既に数足届いているはずであり、そして何と言っても昨年訪問したホーウィンをまた訪れる予定になっていたからなのです。

台風情報が出た一週間前、嫌な胸騒ぎがありました。国際線である東京からのフライトはまず飛ぶはずですが、東京までのフライトは、うっかりすると止まるのではないか。。。そう思い、出発二日前の情報が出た時点ですぐさまフライトを変更し、東京に前泊することにしました。結果、予想した通り、国際線は予定どおり飛ぶものの、国内線は軒並み欠航となり、前泊したお陰で無事にアメリカまで飛ぶことが出来たのでした。笑


今回のアメリカ出張の前哨戦はD.C. にあるAlden of Washington DC訪問です。ショップのマネジャーであるキャシーにはレアカラーをいくつかお世話になっていて、いつも融通を利かせてくれる為、ある意味お礼を言うためでもありました。笑

ショップにには整然と各種オールデンモデルが並べられ、メインのディスプレイにはアンティークエッジのインディブーツ、ウィングチップブーツが飾られていて、センスのある店づくりが伺えます。

「あんたにシガーシューズ取ってあるわよ」と言うことで早速試着。キャシーにフィッティングを手伝ってもらいながら、他にも色々と試着。お土産にシューホーンとシューレースを大量にもらって次の目的地へ移動です。

せっかくD.C.まで来たのだから、ということで足早に観光を済ませ、レンタカーで二時間ほど運転してホテルに到着。「荷物が二箱ほど届いてると思うんだけど。。。」と言うと巨大な箱と小さな箱が一つずつ出て来ました。。。

大きい方の箱を開けてみると、#8のモデルが3足、シガーブーツが一足入っています。小さい箱からもシガーブーツが出て来て、早速時差ボケで眠くてたまらない中、せっせと靴紐を通し、試着。この時夜中だったので気付きませんでしたが、次の日の朝、太陽の光の中で透かして見たシガーインディの素晴らしい色味に思わずウットリ。。。笑

この後客先を数社訪問し、ようやく最終日のトランジットを利用してホーウィン訪問の日がやって来ました。何よりこの日が特別だったのは、マシューさん、ショーゴさんと初めてお会いする事になっていたのです。数ヶ月前からこの計画を練り、是非一緒に行こうと言う事で予定していたのですが、直前になってニックからメールが。。。「ゴメン、ちょっと出張かぶっちゃって当日いないんだ。。。でも親父に頼んだから大丈夫だよ!」とのこと。親父って、もしかしてホーウィンの社長さんですか?笑

慌ててお土産をもう一つ用意していざホーウィン訪問。ホーウィン社長はすごく気さくでユーモアのある方で、いきなり社長室に入れてもらい、「今片付けるから待ってね、あ、これ因みに今開発中の新色だよ」と言って見たこともないコードバンのサンプルを見せてくれました。「昨日はオールデンの社長来てて、色々話してたんだよ」えっ!、昨日来てたの?それすごいな。。。とビックリ。もしかするとこの新色もその内出て来るのかもですね!笑

「さあ、工場行こうか」と言うことでゾロゾロと社長について工場へ。要領は去年も来たので大体分かっています。最初は原皮のストックヤードです。「原皮は大体フランス、あとカナダの一部。ケベックだよ。あそこはフランス語圏で馬肉を食べる習慣があるんだ」なるほど、だから原皮が取れるんですね。。。それにしても塩漬けにされた原皮には馬の血も滴っていて超グロテスクです。。。「ここで大まかに必要の無い部位を切り取って処理するんだ」匂いも中々です。。。

「次は酸洗の工程だよ。ここで毛を溶かして取り除くんだ。これが工程終わった後の状態。指で押すと戻って来ないだろ?これでベジタブルタンニングの溶液が浸透しやすくなるんだ。酸洗の溶液にもベジタブルタンニングの溶液が混ぜられていて次の工程に移りやすくしてあるんだよ」

「次はベジタブルタンニングの工程だね。原料は樹木の皮などで、あのタンクに入れて溶液を作るんだ。そしてこのプールに入れてチャプチャプと60日間かけてゆっくりとベジタブルタンニングが行われるんだよ。上にあるカムでゆっくりと上下させて、ほら、ティーバッグをお湯の中で揺すると紅茶の成分が出て来るだろ?あんな感じだね。こうやってゆっくりと熟成させる様に成分を浸透させて行くんだよ。」

「ベジタブルタンニングが終わると、ここで大まかにシェルの形を切り出すんだ。彼はこの道40年のベテランだよ。ほら、ここはザラついてるだろ?ここにシェルはないんだ。こっちはツルツルしてるよね?ここで切り分けるんだよ。因みにこっちは皮の裏側、こっちは毛の生えてる表側だね。ほら、(自分の頭を指して)コードバンはこっち側ではなくてこの裏側。。。」と言うと従業員のおじさんは大爆笑。社長の髪が薄くなっていることを笑っているのですが、何とも親しげな暖かい雰囲気が伝わって来ます。黒人の従業員さんが多いのですが、みんなここで働くのがほんと好きなんだろうなあ、というのが伝わって来て実に良い感じですね。

「あ、これがシェルに浸透させるオイルだよ。常温ではペースト状なんだ。溶けるとこんな感じ。でも、ほら、すくうとすぐ固まるだろ。いや、ビーズワックスは使って無いんだよ。魚系のオイルだね」なるほど、どうりで鰹節の匂いを強烈に凝縮させたような匂いがする訳です。。。「君たちの履いてるオールデンの匂いもこのオイルの匂いだよ」と言われて、あの芳しい大好きなコードバンの匂いが実は魚の匂いだったとはビックリです。笑

それにしても流石社長さん、工場見学が念入りです(笑)。前回来た時よりも時間をかけて詳しく見せてもらいました。

「このガラスの上に貼っつけて乾かすんだ。あ、これ?乾くと剥がれるよ、ほら」って、剥がしちゃって良いのかな。。。?笑

「ここで裏側を削っていってシェル層を出すんだ。ほら、こんな感じでシェルの部分が見えて来ただろ?」コードバンはお尻の皮の内側にあります。そこを削り出してシェル層を出すんですね。

「ほら切り取ると断面の上の方に黒っぽい部分あるだろ?この部分がシェルだよ。あ、これ?良いよ、あげるよ。こっちの君にはこれ。」おー、これが生コードバンか!とみな大興奮です。

「磨きをかけるまではこんな感じでツヤが無いんだ。うーん、あ、これはシワシワだな。よし」と言って、社長自らガッチャガッチャと機械を使って磨きをかけて行くとドンドンツヤが出て来ます。「ほら、この部分はツヤツヤ、こっちはツヤなしのまま。これもあげるよ。これは染めのしていないナチュラルコードバンだよ」えー、こんな大きなコードバンもらっていいの??僕のお土産の効果ですかね?笑

最後は検品工程です。目を凝らして探しましたが、スクラップエリアにはレアカラーは見当たりません。。。よく見るとダークブラウンと書かれた棚もありますね。。。「あ、これ?これはバーボンだよ。ほら、これ二色に見えるだろ?どっちが濃い?よし、じゃひっくり返すよ。さあ、どっちが濃くなった?」コードバンはいわゆるスエード側なので、起き毛を寝かすようにしてツヤを出すので、毛の寝てる方向によって濃く見えたり薄く見えたりするんですね。

「最後はサインエリアだよ。みんな記念にサインしてってよ」ということでみんなでサインを。。。「スクラップの切れ端かあ、何色が欲しいの?カラー4?ちょっと待って、聞いて見るから」え、マジですか!?やった、聞いて見るもんですね!笑

「じゃあ、待ってる間に。。。」ということでバーボンで出来たバッグを見せてもらったり、Tシャツとかお土産を購入。「シューホーンだね、カラー4は、うーん、今黒とネイビーしかないな。。。え、これ?うん、まあ新品だけど、二、三回使ったかな?せっかくだからお土産に買いたい?うーん、じゃあ昔の値段で良いよ」と言うことでカラー4のシューホーンを購入。カラー4の色合い、ヤバイです!笑

「カラー4のスクラップは無かったみたいだね。」ということで、それぞれ#8の切れ端にサインをしてもらい、最後は社長さんと記念撮影。この時写真撮ってくれた娘さんが超美人でみんなウットリです(笑)。え、娘さんの写真?いや、撮ってないんですよ、ていうか撮らせてもらえそうにない口ぶりだったので。。。いや、いりますよね、やっぱり。。。(汗)次回必ず撮って来ますので。。。笑

今回はマシューさん、ショーゴさんと一緒というオマケ付きで、その他、マホガニーとカラー4の色の違いとか、今回何故マホガニーが出て来たのか、など普通知ることができないことを色々と教えてもらい、実に楽しいホーウィン見学でした!



【編集後記】2018/03/17

一緒にホーウィンを訪問したお友達のショーゴさんがホーウィン訪問記を執筆されました!こちらにもたくさん画像が掲載されていますので、ぜひご覧ください!


0コメント

  • 1000 / 1000