Aldenに合わせたい時計②

前回好評?、だったかどうか分かりませんが(笑)、今回も時計ネタの続きです。第一回目はいきなりサークルミラーの1016エクスプローラーでしたので、もう少しハードルを下げてマットモデルのものを紹介することにしましょう。


② Explorer II Ref: 1655 (1977)

とはいえ、今手元にあるマットモデルは手巻きのデイトナを除いてこれのみになってしまい、後はみんなミラーになってしまいましたので、果たしてこれがハードルが低いと言えるか、と聞かれると難しいところですね。。。いかんせん、どのモデルも高くなってしまいました。。。

ミラーモデルは、何と言ってもオリジナリティとコンディションがキモです。60年代までの時計ということになりますので、半世紀前の時計ということですから、何しろ玉数が少なく、良いものを探すというより、どこで妥協するか、というのが大事になってきます。ミラーはダイヤルがメインの時計ですから、ケースやブレスレットには目をつぶらざるを得ないのですが、肝心のダイヤルにも大抵何らかの欠点があるもので、どこまで妥協できるか、そしてどこまでオリジナリティにこだわるか、というのが大変重要になり、初心者にはやはりハードルが高いです。

そこへ行くとマットモデルの場合、70年代、80年代の時計ですから、比較的玉数が多い為コンディションの良い物も探しやすく、ほとんど使ってない物すら見つけることも不可能ではありません。その分価格に跳ね返るのはもちろんですが、そういうものほど後々価値が出てきます。マットモデルの場合はケースも含めて徹底的にコンディションにこだわりたいですね。

このエクスプローラー2も、大変思い入れの強い時計です。私が最初にエアキングを購入し、エクスプローラーに出会って欲しくてたまらなかった頃、前回紹介したムック本の「世界の腕時計 No. 12」にエクスプローラー特集があり、併せて紹介されていました。その奇抜なデザインに惹かれ、毎日の様に本を眺めてはため息をついていたのを思い出します。どれぐらい本が擦り切れるほど毎日眺めていたのか、セロハンテープで補修してありますね。笑

ロレックス、特にスポーツモデルというと、特徴的なデザインがいくつかあり、まず12時位置の大きな逆三角形の夜光、それ以外の時間には丸いドット夜光、そしてベンツ針です。これらは精巧なパチモンでなくても、よく真似されるディテールで、皆さんお馴染みだと思います。

ところがこのエクスプローラー2だけは例外で(デイトナも除く)、12時位置の逆三角形はともかく、特徴的なデザインであるはずのドット夜光や、ベンツ針が無いのです。12時位置の逆三角形の夜光も他のモデルに比べてひときわ大きく、そのスペーシーなデザインはまるでロレックスでは無い様な感覚すら覚えます。

大学生の時にこれを見つけた僕は一気にその虜になってしまい、毎日の様に渋谷や、中野のビンテージウォッチショップに出掛けては試着を繰り返し、ため息をついていたものでした。当時確か40万円台だったと思いますが、これもキムタク効果で、一気に百万を越え、オールニュー170万、なんていう時もありました。

ここで重要なキーワードですが、オールニューとは、まさにその言葉通り、日本ロレックスにオーバーホールに持ち込んで、全てのパーツを新品の交換部品に換えてしまうことを言うのですが、2000年頃これが流行ったんですよね。ブレスレット、ケース、ベゼルはもちろん、ダイヤル(文字盤)、針(ハンドとも言います)、風防(クリスタルとも呼びます)、リューズ(竜頭、クラウンとも)、下手をするとムーブメントまで新品に換えてしまっているものまでありました。

ビンテージジーンズや古着は認知されてましたから、中古が嫌と言うより、ピカピカでガッチリしたケースやブレスレットが好まれたんですね。ケースなどはオーバーホールに出すと研磨されて段々痩せたり、下手に研磨されると丸くなる場合もありますし、ブレスレットも段々伸びてゆるゆるになってきますから。

ところがこれが大きなアダとなって帰ってきます。皆さんオールデンが好きだと思いますので理解出来ると思いますが、やはり”経年変化”、好きですよね?オールニューはこれを殺してしまったんです。。。というか、経年変化しない夜光塗料、「ルミノバ」が使用されたダイヤルに代わっている事に、後になってみんな気付いたんですね。

すべての放射性物質には、「半減期」というものがあり、ラジウムやトリチウムなどの放射性物質を使って夜光塗料を作っていますので、ある程度放射が進むと光らなくなってしまいます。ラジウムは半減期の長い種類は1600年(ほんとかな)もあるそうで、確かに僕の持っているラジウム夜光が使われたサブマリーナーは、暗闇でじっと目を凝らしていると、結構光ります(流石に目が慣れてこないと光りも弱いので見えませんが、慣れるとメラメラと光っているのがわかります。あ〜、今被曝してるな。。。と感じる瞬間です。笑)。ところがラジウムは放射線量が多く、危険だということで1960年にはトリチウムに変わってしまいます。

一方でトリチウムは半減期が12年とかだそうで、トリチウムが使用されていたのが1960年〜1997年ぐらいなので、すでに12年以上経っていますからもう光らないわけです。ちなみに、ラジウムもトリチウムも放射性元素ですから、自ら光る、自発光というやつです。

で、光らないと実用にならないということで、ルミノバという畜光型の塗料(光を吸収して暗闇で吐き出すことで光る)に変えられていくのですが、これがまた真っ白けの塗料で、ラジウムやトリチウムが、徐々に色が濃く変色していくのに対してずっと真っ白けでは面白くもなんともない。。。オールニューでピカピカになったのと同時に、僕らの大好きな経年変化も失ってしまった、ということで今はかなり価値が下がっています。当時はすごく高かったのに。。。おまけに今では研磨などせず、傷がある方がむしろ好まれる傾向があり、特にダイヤルの夜光(特にミラーの夜光)には全く手が加えられてないこと、針の夜光は欠落する可能性があるので、修正があっても価値には影響はありませんが、長さや時代などはあっていないとダメ、文字盤やベゼル(風防の周りの輪っかです)などの文字も、オリジナルと交換部品とで字体が異なったりしますので、それが年代にあっているか、などが重要とされています。上の画像を見ると、トリチウムの夜光がうっすらとクリーム色に変色していますよね。やはりオリジナルが一番です。

この個体はワンオーナーものではないですが、おそらく2番目のオーナーの方がかなり長い間大切に持たれていた時計で、その証拠に国際サービス保証書が4枚くらいついていて、日本ロレックスで研磨なしを指定してきたのか、ケースに研磨があまりされておらず、かなりバキッとしています。これだけのコンディションのものは中々最近見ないですね。。。ちなみにケースコンディションの見方は、6時側、12時側から見て、ケースの足(ラグと呼びます)の太さを見る、ケース裏側から見て、ラグの角っこの面取りがバキッとした状態で丸くなっていないかを見る、ケース側面を斜めから見たりして、映り込み具合が歪んでいないかを見る(研磨すると、どうしても映り込みが歪んでしまいます。一度以上研磨されている個体がほとんどですので、多少はしょうがないですが、たくさん見ると、バキッとした状態か、ダレた状態かすぐわかるようになります)、という感じです。

また、これに付属しているブレスレットは無垢のブレスレットですが、巻きのブレスレットから無垢のコマのブレスレットに変わるのはちょうど1977年頃ですから、まあどちらでも正解だと思います。因みにバックルに刻まれたアルファベットの刻印である程度の年代は特定できます。本来これには「A」の刻印があるべきですが。。。まあブレスレットはしょうがないです。笑

さて、これに合わせるオールデンですが、これだけスペーシーかつファンキーなデザインですので、やはりラベロジャンパーあたりですかね!どちらも中々ないデザインだと思いますので、ピッタリです。笑

それにしても一番気軽に使えると思い、主に出張用に使っていましたが、ここまで高くなってくると流石に気を使います。が、一番気を使うのはオーバーホールする職人さんだそうです。修理部品がある場合は良いですが、ダイヤルや針はどうしようもないですから、うっかりすることだってゼロではありません。僕もオーバーホールする際には直接お店まで持っていきます。世の中にはクロネコでポールニューマンを送ってくる方もいらっしゃるそうですが、流石にそこまで神経は太くありません。笑

次回はGMTあたりを紹介してみたいと思います。

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